理学療法士の年収について調べたことがある人は多いと思います。
調べたことがある人はわかると思いますが、一般的に「理学療法士 年収」や「作業療法士 年収」というように検索するとほとんどの場合は「平均値」の給与が並びます。
厚生労働省によると年収の平均値は「410万」とのことです。
ですが、理学療法士の年収においてはその平均値が妥当とは言えません。
理学療法士においては、実際の年収額は中央値のほうが現実に近い値であると考えられます。
現実に近い数字がわかることで「客観的な自分の位置や周りとの違いを比較」することできるでしょう。
今回は理学療法士の給与は「中央値」で考える根拠を解説していきます。
平均値と中央値の違い

平均値と中央値の違いですが…簡単です。
とあるリハ職場の年収【平均値】
Aさん・・・320万
Bさん・・・340万
Cさん・・・360万
Dさん・・・380万
Eさん・・・2000万
Aさん~Eさんの年収を合計すると3400万。
3200万を5人で割ると680万
つまり、職場の平均年収は680万
とあるリハ職場の年収【中央値】
Aさん・・・320万
Bさん・・・340万
Cさん・・・360万
Dさん・・・380万
Eさん・・・2000万
年収を低い順番に並べて
丁度真ん中が360万
つまり、職場の年収は360万前後の人が多い
どうですか?
平均値の場合は5人中4人が300万台でも、あと1人が2000万台である場合は平均が680万と1人の高い人の年収に引っ張られて異常に高くなってしまいます。
これは実社会でも同じです。今回はサンプル数(Aさん~Eさんの5人)が少ないですが、パーセンテージでいえば20%の人(5人中1人。上の例だとEさんのみ)の給与が高いと低い人たちもそちらにつられてバランスが崩れるのです。
例えば、1000人中200人(20%)、10000人中2000人(20%)というように人数の規模が大きくなっても同様の考え方ができます。
それに対して中央値の場合、5人中1人が突出している年収でも、その数字に引っ張られることなくその職場における年収の真実に近い数字なるのです。
理学療法士・作業療法士の年収を中央値で考えるべき理由
平均値と中央値の違いについて簡単に解説しました。
では、PT・OTの年収をなぜ中央値で考えるべきなのでしょうか?
下記に挙げました。
- 業界の大半は経験年数の若いセラピスト
- 昇給が低い
- 職域毎の年収差
業界の大半は経験年数の若いセラピスト
理学療法士・作業療法士という国家資格はまだまだ若い資格です。また、国の政策によってここ十数年で大量のPT・OTが誕生しています。
毎年1万人もの新人セラピストが資格を取得し就職しているわけで、昔から勤務している「金の卵」と言われて高い給与をもらい続けてきたセラピストは少数派になってます。
例えば極端な話ですが、10人中9人が300万で残り1人が2000万もらっている場合は平均600万になるため、その職場では1人あたり600万もらっていますと解釈されてしまうわけなんですね。
10人中1人(10%)が突出して高い場合に平均値ですと高値になってしまうのです。
ここまでで何か気付きませんか?
これを見て下さい。理学療法士の年齢毎の人数です。出典は理学療法士協会より。

70歳までの理学療法士は全体で132.914人です(給与についてですから、71歳以上は割愛)。
そして、そのうち40歳以下は70%の93.038人ということになります。

そして、その40歳以下93.038人の70%の勤務先が給与が控え目な総合病院や一般病院と言われています。
病院の場合、一般に昇給額が少ない(3000円程度)といわれており新卒~40歳までの年収は300~500万程度(500万超えはほとんどが役職付き、役職付きは人数が少ない)でしょう。ただ、病院勤務の大多数の給与は400万以下です。
つまり、理学療法士の70%の人たちの実際の年収は400万を超えない程度の給与ということになります。
現在のPTの平均年収は「410万程度」と言われているようですが、この数字は少数のセラピストの給与に引っ張られていると思われます。
私の知っている有名なセラピストで1500~2000万近く稼いでいるという人もいるので、そういう人に引っ張られて感じなんでしょうか。
そうなると、若い世代が多い職業で且つ昇給が少ない職業であることから、中央値のほうが理学療法士がもらっている給与の真実に近い数字と言えそうです。
大多数の若いセラピストがもらっている給与収入はもっと低い数字の可能性があるんです。
そこで調べてみると、平均年収.jpによれば理学療法士の年収中央値は約351万円とされています。
ちなみに日本企業の年収中央値は399万円ですから、日本人中央値を下回っています。
低い数字ですが、後輩と給与の話をしていたりすると中央値の数字に近い人が多いため、多数の理学療法士が実際にもらっている金額に近い数字なのかなと思いますね。
昇給が低い
昇給が低いことも中央値を使ったほうが良い理由になります。
現在の状況では、年齢が高く年収が多い一部の療法士と、大多数の低年収層の2極化が進む可能性があるということです。
どういうことかというと、理学療法士の昇給額は3000円程度と言われています。10年勤務したとしても月額3万円程度しか上がったことにならず、年収でいえば36万上がることになります(ボーナス除く)。
10年で36万円ってびっくりな数字ですよね?少なすぎます。
この先もこのような状況が続くようであれば、平均値で給与を算出しようとすると自身の給与よりも高い数字が出て現状置かれている状況がわからなくなるかもしれません。
一昔前の「金の卵」と言われていた時は、理学療法士に対して時給7000円~8000円で契約をしていた職場もあったそうです。医師みたいですね。
リタイアした私の上司からの話ですが、すごい時代ですね。
昔の時代に戻ってほしいところですが現実はそれどころではなく、診療報酬改正でよりシビアな状況に陥る可能性もあります。
職域毎の年収差
これも中央値のほうが良いと考える要因になりますね。
一般的に医療保険下でのリハビリは給与が低いです。総合病院や一般病院における給与は昇給が低いです。
一方で介護保険下でのリハビリは優遇されている場合があります。
とはいえ、理学療法士が国内で働くフィールドとして大多数の施設は病院なのです。
過去のデータによると約7割の理学療法士が何らかの病院施設に勤務していることになります。
つまり、初任給が低めに設定されていて昇給額が少ない病院に大多数の理学療法士が勤務していて、大学教授や役職付き公務員理学療法士など少数の給与が高い職域に引っ張られてしまいますので平均値を使うとデータにばらつきが出てしまいますね。
同じ理学療法士が同じ経験年数で給与が大きく違うことってありませんか?
職域の違いや病院毎の違いだと思いますが、不思議な話ですよね。同じ単位制なのに。
理学療法士の年収平均値と中央値
あらためて理学療法士年収を平均値と中央値で比較してみましょう。
さきほど挙げたように、理学療法士の平均年収は約410万、中央値は約350万でした。
これに性差を加えてみます。

男性の平均値は417万、中央値は390万。
女性の平均値は390万、中央値は312万。
性差を加えるとかなり数字に幅が出るデータになりますね。
どちらにしても、平均値に比べて中央値の方が小さな数字になります。
このことからも、平均値だけでなく中央値という概念も知りながら、実際の自分の年収と比較していくと良いと思います。
理学療法士・作業療法士が年収を上げるには?
プライベートな話題なので、自分の周りの人と給料を比較することはあまりないかもしれません。
そのため、自分が置かれている立ち位置を客観的に評価することが難しいでしょう。
そのような中でも、年収を考える際は中央値で考えることが大切ということを解説してきました。
そして、思ったよりも年収が少ないことがわかったと思います。
年収が全てではありませんが、少ないよりも多いほうが良いですよね。
それでは、年収を上げていくためにはどうしたら良いのでしょうか。
ここではその対策について解説していきます。
- 転職
- 副業
転職
年収を上げるための方法として「転職」があります。
少し前の日本においては終身雇用という概念が強かったため、転職でスキルアップをして年収を上げることは一般的ではなかったと思います。
しかし、国内の情勢が変わっていき転職をすることが一般的になってきました。
それは「転職サイト」や「求人サイト」などの広告露出が増えてきたことからもわかると思います。
そんな状況の中で、年収をアップするために「転職をする」という判断をしていっても良いのではないかと思います。
では具体的にどのように進めていくべきなのでしょうか?
一番てっとり早いのは「転職サイト」を利用していくことです。
「転職サイト」とは、無料で登録するとリハビリ業界に精通した担当の転職アドバイザーがいろいろなサービスを提供してくれるというものです。
一方で「求人サイト」というものもあります。こちらはご存じのPTOTSTネットのようなサイトで、求人情報があり、それを見て自分から求人先に連絡を入れていくものですね。
私は過去3回の転職をしており、転職サイトと求人サイト両方をどちらも利用して転職活動をしています。
そんな私がオススメするのは「転職サイト」のほうですね。
なぜかというと「無料で有意義なサービスが利用できる」からです。
具体的には、
- 求人先と連絡を取り合ってくれる
- 履歴書や職務経歴書の添削
- 面接同行
- 給与交渉
- 面接対策
- 表に出ない情報を教えてくれる
などなど、さまざまなサービスを提供しています。
正直、使う前は利用することを迷っていました。
まず、仲介役になるアドバイザーとのやり取りが面倒だと感じていたからです。仲介が入るよりも求人先と直接やりとりしたほうが早いですし。
また、転職サイトから「何度も連絡がくるためしつこい」というクチコミが多かったので、それを嫌だとも感じていました。
ところが利用してみると、こちらのスタンスをしっかり伝えれば(連絡は最低限、必要な際はコチラから連絡するなど)しつこい連絡もこなかったです。
また、アドバイザーも腰が低い感じの人で話し易かったため、やりとりに気をつかうことがありませんでした。
「意外につかいやすい」と思い、そのまま継続利用しました。
そして年収UPし休みも多くて定時で上がれる職場に転職することができたのです。私にとっては良い待遇で、求人倍率もあるそれなりに人気の職場でした。
求人サイトで情報検索をしても良いと思いますが、求人先の表に出ない情報などはわからないことが多いです。
また、転職会議などでクチコミ情報を探しても良いと思いますが、希望する求人先の情報がないことも多いです。
そういう意味でも「転職サイト」を使ってみることをオススメします。
転職サイトについてメリットとデメリットを記事にしています。参考にしていただけると幸いです。
副業
続いて副業です。
近年、働き方改革で社会全体で副業を解禁してきている風潮があります。医療業界も同じで、少しずつですが副業をしても良いという施設が増えてきているようです。
私の勤務している施設も副業可能になっています。
完全に定時上がりの職場であり残業で稼ぐことができないため、その代わりに副業を認めている感じですね。
では、理学療法士ができる副業には何があるのでしょうか?
WEBライターやせどり、プログラミングなど様々な副業があります。
その中でも私のオススメはWEBライターです。
オススメの理由は理学療法士としての即金性があり、その能力を活用できるためです。
WEBライターは一般的にクラウドワークスやランサーというサイトに登録して、そこで仕事を請け負って作業していきます。
ライティングするテーマは様々で「仕事」「株」「キャンプ」「ゲーム」など非常にたくさんあります。また、募集元は大手から小さな法人まで様々です。
そして、1文字○○円で2000文字などの条件で仕事を請け負っていきます。
最初は実績がないので1文字0.5円程度の仕事でなければ受注できないと思いますが、実績を積み上げていくと採用されやすくなりますので、運が良ければ1ヶ月目で2~3万程度稼げるかもしれません。
理学療法士は論文を読んでいたり実習でも文章を書いたりしていたと思いますので、文章を書く、まとめる能力を活用していけると思います。
私の知っているPTで1文字5円で仕事をしていた人もいました。もちろん、運も左右しますが。
もう一つは訪問リハです。訪問リハは正社員でなくアルバイトで契約すると、いまだに時給3000円や4000円で働くことができる職場があります。
通勤して働くため体力がないとできないと思いますが、自信がある方は検討しても良いかもしれません。
私は家で寝転がりながら副業をしたいと思っていたのでクラウドワークスが性に合っていました。理解力や記憶力に乏しい私でもできますので誰でもできますよ。
詳しくはコチラで解説していますので、ご覧になってみて下さい。
理学療法士にオススメの副業についてです。
まとめ
理学療法士の年収を考えるには、平均値よりも中央値のほうがより妥当ということについて解説してきました。
理学療法士は国家資格になってからまだ若い職業であり、また、国の政策もあって20代~30代の人が多数になってます。
平均値で算出すると少数の突出した高い異常値に引っ張られてしまうため、その場合は中央値で考えたほうが良いということですね。
その数字がわかることで自分の置かれている状況や他の人と比較することができ、客観的な判断ができるようになるかと思います。
おそらくですが、毎年1万人のPTが誕生しているためこの傾向は今後も続いていくでしょう。
そして、いずれは平均値と中央値が似た数字になっていくはずです。
理学療法士は患者さんや利用者さんのために働けるやりがいがある仕事ですが、給与が低いと生活に響いてしまい思うような人生設計ができなくなってしまうかもしれません。
勉強のための教科書購入や講習会参加などで知識や技術研鑽が気兼ねなくできなくなります。
その場合、せっかくすばらしい仕事をしているのに苦痛を伴いながらの業務になってしまうでしょう。
決して転職や副業を勧めるわけではありませんが、自分のキャリアプランや年収などを俯瞰してみつつそのような方法も導入していくと良いのではないかと思います。
よりよい理学療法士人生の一助になれば幸いです。
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