一般企業の社員に比べて資格職は転職することが普通だと考えられています。理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの資格もその一つです。
しかし、転職回数が多い場合はどうでしょうか?
もしあなたが採用側だとして、複数回転職している人が面接に来たとき何を思いますか?
「なぜ、これだけ転職しているんだろう?何か理由があるのかな?」と思うはずです。
転職回数が多いということはその職歴に疑問を持たれることが多いでしょうし、面接担当によってはマイナスのイメージを持つ人も。
しかし、だからといって転職回数が多いと転職できないかというとそうではありません。転職回数の多さを強みとしてアピールできれば、転職回数が多くても問題なく転職を成功させることができます。
そのためにも「どれくらいの転職回数が不利になるのか?」「どのように転職回数の多さをプラスとしてアピールすればいいか?」について理解しておくことが大切です。
本記事では、そんな転職回数が多いPTが転職を成功させるにはどうすれば良いのかを解説していきます。
理学療法士の転職回数は平均するとどの位?


理学療法士は転職する人が多いっていうけど、何回くらい転職するのが普通なの?
厚生労働省が公表している『平成30年賃金構造基本統計調査』によると、理学療法士の平均勤続年数は6.1年となっており、全職種の平均値11年と比べて短くなっています。
仮に養成校卒業から定年の60歳まで働いたとして6年毎に転職をしたとすると平均転職回数は概ね5.5回程度となります(ちなみに全職種の場合は3回程度)。
この平均の数字を見ると、転職自体は数回しても問題ないということがわかります。しかし、生涯で5.5回の転職なのか20代で5.5回の転職なのかで捉え方が大きく違ってきますね。
また、転職回数について「転職回数が多いことはなぜ良くないのか?」「何回ぐらいの転職が不利か?」などを明確に理解している人は少ないです。
これらを理解しておけば、転職回数が多くても不安になることは減りますし、それを解消するアピールによって転職回数のデメリットを打ち消すことも可能です。
それでは解説していきます。
転職回数は年齢によって評価が異なる
上でも挙げましたが、年齢によって転職回数が与える影響はまったく異なります。
20代で5回の転職をしている人と40代で5回の転職をしている人が中途採用の面接を受けにきたとしましょう。
履歴書を見た時「20代で転職回数5回?5回も転職したの?なぜ?」と真っ先に思います。なぜなら20代で転職回数5回ということは、1施設あたりの平均在籍期間は単純に2年未満ということになるからです。
それは流石に少ないですよね。何か問題があって一つの施設で働けないのかもしれないと思い経営者は採用に黄色信号を出すと思います。
しかし、40代で5回の転職であればそれなりの期間1施設に在籍してますし「転職回数としては多いけど前向きな理由かも?」と判断すると思います。理由は気になりますが、プラスのスタンスで話を聞きたくなります。
このように転職回数は年齢によって大きく評価が分かれるのです。
ちなみに、転職回数が年齢によって影響されるということは理学療法士だけに限ったことではありません。どの職種でも変わらないことだと思います。
採用に影響する転職回数は?
「5年で2回以上」の転職を経験している場合、採用時に不利になりやすいと言われているようです。
私が採用業務に携わっていた時、5年で2回以上転職している人が病院見学に来ていました。意外と何人もいるんですよね。
見学の時点で本人に「在籍期間が短いのは何か理由があるのですか?」と確認すると、さまざまな理由が挙がってきました。
そこで理由があやふやだったり、不明な点が多かったりネガティブな理由だった場合には施設長と採用をどうするか検討したものです。
しかし、スキルアップなどのポジティブな理由で転職をという人も多かったです。採用側としては例え在籍期間が短かったとしても理由がポジティブであれば採用したいと思え、採用する方向に話を進めたりしました。
つまり、短期間の転職自体が全てマイナス評価につながるわけではありません。
しかし、医療業界に限らず日本の一般的な企業は一つの職場で3年は続けるというのは常識となっています。
そのため3年未満での転職を経験していると慣習的に転職で不利になることが多いのですが、ポジティブな理由次第で挽回できる可能性が出てくるのです。
もし5年で2回以上の転職をしている方でも、キャリアアップやスキルアップの転職であればそこまで問題になることはないのではないでしょうか。
ただ、マイナスの理由は採用担当から敬遠されがちなので、仮に本当はマイナスな理由だったとしてもポジティブな理由に言い直すことが重要です。
なぜ転職回数が多いと良くないのか?
転職回数が多いと経営者から「せっかく採用してもすぐに転職してしまう」と思われてしまうのです。どんな経営者も、長期間勤務してくれるスタッフを採用したいと考えています。
なぜ長期間勤務してくれるスタッフを採用したかというと、求人募集するのに広告費用がかかったり、採用した後の教育にもコストがかかってくるため短い期間で転職されてしまうとコスト面で不利になると考えているのです。
仮に、転職サイトを利用して理学療法士を採用したとします。定着して数ヶ月後に転職者の年収の20%程度の紹介料を支払わなければいけません。一般的に数十万程度の支払いになるので、結構なコストですよね。
そして、せっかく紹介料を払ったのに、その後すぐに退職してしまったら払い損になってしまうわけです。
広告で求人を募集してから採用するだけでもこれだけのコストがかかります。さらに、採用した後も業務を覚えてもらったり、その時間を提供したりとさまざまなコストがかかるのです。
中途でも新人でもスタッフを雇うためには想像以上にコストが必要となります。
そのため、コストをかけてせっかく採用して教育したスタッフがすぐに辞めてしまうのは大きな損失になってしまいます。
このため、すぐに辞める可能性がある転職回数が多い人を敬遠しがちなのです。転職回数が多いと転職で採用されにくくなる理由はここにあります。
転職回数が多い理学療法士が転職を失敗しないコツ4選

転職回数が多い理学療法士が転職を失敗しないためにはどうしたら良いのでしょうか?

わざわざ転職するのに失敗はしたくないよ。良い方法教えて!
それでは転職を失敗しないコツ4選を解説します。
- 転職する理由をポジティブなものに
- 希望するフィールドの技術や知識を高めておく
- 今までの転職で得たことをアピールする
- 長期で働く気があることをアピールする
以下、それぞれについて解説します。
転職する理由をポジティブなものに
転職する理由はポジティブなものにしましょう。
転職するということはネガティブな理由で退職することがほとんどだと思います。ですが、そのネガティブな理由をそのまま伝えては「不満ばかり持つ人」と思われてしまい、面接官に良い印象を与えられません。
「人間関係が嫌になった」や「給与が安すぎた」など理由があるかもしれませんが言わないようにしましょう。
例えばですが転職回数3回で「急性期→急性期→回復期→クリニック希望」という流れの場合…
私はこれまで3つの職場に勤務して参りました。1つ目の職場は急性期病院でさまざまな急性疾患のリハビリテーションを経験できました。その病院では1日19単位取得が義務付けられており、18~19人程度の方に対してリハビリを行えたため、短い期間でも整形疾患から心疾患まで多様な疾患に携われたと思います。そして、様々な疾患を見ていくなかで整形疾患に興味をもつようになり、整形疾患を中心に診ることができる急性期病院に転職致しました。そこでは肩関節や脊柱、股関節や膝関節のリハビリを経験することができました。しかしDPC採用病院であるため病床回転率が高く長くても14日程度までしか同一疾患を診ることができませんでした。はじめはそれで良いと思って転職したのですが、長期の回復過程におけるリハビリはどういうものか勉強したいと考え、次の回復期の職場に転職しました。そこでは急性期から転院してきた方々がメインで整形疾患を算定上限の150日まで診ることができ、回復過程におけるリハビリテーションの方法を学ぶことができたと思います。そこで勤務していく内に、痛みが慢性化していく方々が多くいるということがわかりました。そこで急性期から慢性期の患者様をまんべんなく経験できる御院で働いてみたいと考えました。
簡単に書きましたが、要するに転院の理由は自分のやりたいリハビリを目指した結果だったというものです。その点を強くアピールしています。
こんな感じの流れだと転職理由に矛盾がないですし、転職回数が多いことはマイナスにならないと思います。
仮にそういう理由じゃなかったにせよ、ポジティブなつじつま合わせをしていくことが転職を成功させるためのコツになるかと思います。
希望するフィールドの技術や知識を高めておく
転職で失敗しないためには転職先で使う技術や知識はあらかじめ勉強しておきたいところです。転職先で活用できる資格を取得していたりすると意欲が高い人と見られ採用に近づきます。
理学療法士として働いていると、急性期や回復期などどのフェースでも必要になってくる知識はある程度共通なものであることがわかってきます。解剖学・生理学・運動学は必須ですよね。
それにプラスして急性期ではリスク管理だったり、訪問では介護保険制度だったり必要な知識のウエイトが違ってくることはわかりますでしょうか。
例えば維持期は全身状態が安定しているので、急性的なリスク管理の知識である心電図の読み取りはそこまで使わないでしょう(もちろん読めることにこしたことはないです)。
なので、自分が転職したいと考えるフィールドで必須となる知識や技術を知りそれに対して勉強を進めていくことが重要です。
整形に興味があって整形クリニックに転職したいと考える人が、心臓リハビリテーション指導士の資格をアピールしたとしてもそこまで効果があるとは思えません。なぜかというと転職先で使わないからですね。
それよりも、肩関節学会に入会しているとか、アスレチックトレーナーの資格を取得しましたとか入谷式足底板中級コース受講しましたなどのほうが採用側は「勉強してそう。意欲が高いな」という印象を持ってくれるわけですね。
現在勤務している職場での技術や知識を学ぶことも大切ですが、転職先で使う知識や技術の勉強もしておくことも転職を成功に近づけるコツになります。
私が採用側にいた時、そういう熱意がある人はできるだけ採用したいと思い「あの人は職場にとって適切な人材です。採用して欲しいです」と上申したものです。当然、それがすべて通ることはありませんでしたが。
今までの転職で得たことをアピールする
今まで複数の転職で得たことをアピールすることは非常に有効です。転職回数が多いことは伝え方によっては経験が多いというメリットのアピールになります。転職回数が多く経験豊富と思わせることは非常に重要です。
なぜなら、転職における採用側は豊富な経験を持つ即戦力を求めているからです。
豊富な経験を持つ即戦力とは文字通り、さまざまな職場で経験を培ってきた人のことですね。
例えば私の場合、3次に近い2次救急のICU・HCUで勤務していたため、これからHCU病床を立ち上げていくという転職先に重宝されました。
また、転職先が紙カルテから電子カルテに移行する予定ということだったので、以前の職場でその経験をしているためそれをアピールすることもかなり有効だったようです。
採用されて少し経過したあとで面接してくれた施設長に話を聞いたところ「転職回数は多かったけれど必要な転職だったと解釈したしスキルと経験が高かったのですぐにでも来て欲しかった」と教えてくれました。
ちなみにその職場は面接した日に即採用されました。当時転職回数は3回目でした。
私の経験上、転職回数が多い場合はそれなりにデメリットになりますが、いくらでも巻き返せます。自分で回数が多いと思うならば、そのデメリットをメリットに置き換えれば問題ありません。
むしろ、他の志望者よりも多くの職場でいろいろな経験をしたということは希少です。転職回数の豊富さをイコール経験の多さとして前面に出してアピールするのです。例えば面接のときに、以下のようにアピールします。例は「急性期→回復期→クリニック→訪問リハ希望」です。
私はこれまで、2次救急の急性期病院と回復期病院、クリニックに勤務しその施設毎に異なるリハビリテーションを経験して参りました。2次救急の急性期病院では整形疾患や脳疾患、呼吸循環器、がん疾患など様々な疾患のリハビリを経験しました。急性期病院であるためルート管理や全身状態に注意し、リスク管理の知識や技術を学ぶことができました。続いて回復期病院では、脳血管疾患や整形疾患などの病態回復を予測しながらリハビリを経験でき、家屋調査による環境調整を前提としたアプローチの重要性を学ぶことができました。クリニックでは、今まで急性期や回復期で学んだ病態から転帰予測ができるようになり、それに加えて徒手療法や運動療法を用いてより局所へのアプローチができるようになりました。これら3つの施設で学んだ知識や技術は訪問リハビリでも活用できると思います。訪問中の利用者への状態変化に対しては急性期で学んだフィジカルアセスメントを活かすことができると考えます。また、回復期における残存機能を活かしながらの環境調整や介護保険制度を用いた物品の知識なども利用者への提案に利用できるものと思います。
このような感じで、転職希望先によりますが今まで学んできた知識をどんな場面で活用できるかを具体的にアピールできることが大切です。
採用担当に「この人はこんなことができるんだ。この施設でそういう活躍ができるんだ」と思わせれば採用に近づきます。
それと、もし経験年数が10年前後であれば採用側はプレイヤーとしての働きだけでなく職場をまとめて欲しい、管理的な仕事をして欲しいという希望をもっていることがあります。
そのため「マネージメント的な経験を御院で活かせます」ということを加えたほうが良いでしょう。仮にあまりマネージメントに関与してこなかった人でも、新人指導や実習生への指導などをしたことがあると思いますので「職場における新人教育マネジメント」など少しだけ言い方を変えてマネジメント的なことも行ってきたとアピールしても良いと思います。
事実から逸脱しなければ、多少誇張した言い方をしても問題ないですよ。ただ、質問された時にはちゃんと答えられるようにしておきましょう。
長期で働く気があることをアピールする
転職回数が多い人は、長期で働く気持ちを持っていることをアピールすることが重要です。採用側は「またここもすぐに辞めてしまうのではないか」という不安をもっています。
不安を持たれないようにするには、長期で勤務できることとその根拠を組み合わせたアピールが重要になります。
「今回の転職が最後のつもりです」くらいのアピールが必要だと思います。
私は毎回この言葉に近い内容のことを志望動機でアピールしています。転職する度に使ってしまっていますが(笑)。
でも、その位の覚悟で転職をしたほうが面接をしてくださる施設に気持ちが伝わります。
例えばですが…
整形分野の専門理学療法士を目指すとともに肩関節に興味を持っているため、肩関節に力を入れている御院で長く働き、肩関節学会などで研究発表をしてキャリアを重ねていきたいです。
などです。単純に「長く働きたいです」はダメです。なぜこの病院で長く働きたいのかを考え、志望動機に含めると良いと思います。
専門理学療法士や認定理学療法士の取得など目的を明確にし、それと合わせてアピールすると良いでしょう。
こうした今後のビジョンを転職先で達成する意思を伝えることで、「長く働く気があるのだな」という印象を与えることができるのです
転職回数が多い場合は転職サイトの活用が必須
いままで挙げてきたことを意識していくことは重要ですが、それでも転職回数が多いために不利になる可能性は高いでしょう。転職回数が多いということはそれだけマイナスの印象を持たれ易いと考えられています。
では、転職回数が多い状況で転職を成功させるためには、どうしたら良いのでしょうか?
それは「転職サイト」を利用することです。
転職サイトのアドバイザーはその業界に精通しているプロですから、転職回数が多い人の転職経験に対するノウハウも多く持ち合わせています。つまり「転職回数が多い応募者はどのようなアピールをすしたほうが良いのか?」「どのような職場だったら受け入れられるのか?」などを把握しているのです。
私が利用した時は3回目の転職の時でした。概ね5年程度の周期で転職をしている私にたいしてのアドバイスの最たるは「長く務める希望を持っているということは必ず強調してください」というものでした。
実際に私が考えた志望動機を聞いて頂き添削して頂いたことは非常に有意義なサービスだと思いました。
このように、業界の知識と経験があるアドバイザーに手伝ってもらえばスムーズに転職先を見つけることができるでしょう。
反対に、転職サイトを利用しないで一人で動くことは情報収集の面や面接試験のノウハウの面で劣ってしまうと思います。
転職サイトを信用し過ぎることは危険ですが、アドバイスを取り入れたほうが転職先が早くきまることは間違いありません。
転職サイトを使って良い条件の転職ができた私が感じたメリット・デメリットです↓
まとめ
転職回数の多い理学療法士が転職を成功させるにはどうしたら良いかを解説しました。
- 転職する理由をポジティブなものに
- 希望するフィールドの技術や知識を高めておく
- 今までの転職で得たことをアピールする
- 長期で働く気があることをアピールする
以上の4つを念頭にすれば転職はうまくいくでしょう。
ただ、転職回数の多さはデメリットになる可能性がありますので、メリットに変えていくために転職サイトの力を借りたほうが良いと思います。
転職サイトのアドバイザーは各施設ごとの裏情報などを知っていることが多いです。その情報が転職の成否をわけたりすることがあります。
以前私が転職サイトを使ったとき、面接の前日にアドバイザーから「この施設はこのような内容の志望動機を伝えたほうが良いリアクションがあります」など本当に重要な情報を教えてくれたりします。
それを言えば合格できるわけではないですが、面接官の採用意欲を高めることは間違いないはずです。
転職サイトを活用して転職を成功させましょう。
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